与那国織はなぜ日本最西端の島で織り継がれてきたのか、問屋頼みから直接の声を聞く小さな産地へ

那覇から520キロ、日本最西端の与那国島。1477年にこの島に漂着した朝鮮人が書き残した記録には、当時の島の機織りや衣服についての記述がある。与那国織の始まりは、少なくとも15世紀にさかのぼると考えられている。今、その産地を支える織り手は20人ほどである。
3行でわかる
- 与那国織は、花織、ドゥタティ、カガンヌブー、シダディの4種に分類される織物で、1987年4月18日付で伝統的工芸品に指定された。
- 1477年に漂着した朝鮮人の記録から、少なくとも15世紀には織物が行われていたと考えられ、1637年からの人頭税の時代には貢納布として盛んに織られた。
- 生産額は2019年度に2,700万円弱、従事者は20人程度。消費者のニーズの把握を問屋の情報に頼っており、直接の声を聞く取り組みが課題とされる。
01この工芸は何か(技術の正体)
与那国織は、日本最西端の与那国島で織られる織物で、技術の違いから花織、ドゥタティ、カガンヌブー、シダディの4種に分けられる。
花織は紋織物で、首里花織と同じ技法で織る絹の着尺が中心である。ドゥタティは島独特の筒袖の着物の生地とされた縞や格子柄の平織物、カガンヌブーは木綿糸を使った先染めの絣の細帯、シダディは多様な模様を浮き出させた手ぬぐいである[1]。
絹、綿、麻、芭蕉の糸を、福木、シャリンバイ、藍などで染め、丹念に織り上げる[1]。
02産地とその歴史
1477年の漂着者の記録に島の機織りの様子が残り、人頭税の時代には貢納布として盛んに織られた。
1477年に与那国島に漂着した朝鮮人によって書き記された「琉球見聞録」(「李朝実録」に収録)に、当時の島の機織りや衣服についての記述が残ることから、与那国織の発祥は少なくとも15世紀までさかのぼると考えられる[1]。
1637年から明治の前半に至るまでの人頭税の時代には、貢納布として盛んに織られた[1]。1987年4月18日付で伝統的工芸品に指定された[1]。
03技術を、生活の言葉で
生産額は1982年ごろの7千万円から1,300万円まで落ち込み、2019年度には2,700万円弱まで回復した。
沖縄県「令和4年度 工芸産業振興施策の概要」[1]
与那国織の生産額は1982年ごろに7千万円に達した後、1,300万円まで落ち込み、2019年度には2,700万円弱まで回復した。2019年度の1人当たりの年間生産額は130万円程度で、従事者数は近年20人程度。生産額のうち観光客が購入する割合は3割程度とされる。
補足: 与那国織は観光土産だけで成り立っているわけではない。観光客の購入は生産額の3割程度で、反物は主に問屋との取引による。
04後継者問題とテクノロジーとの交差点
離島の産地は、消費者のニーズを問屋の情報に頼ってきた。直接の声を聞く仕組みと、観光との連携が課題になっている。
問屋頼みからの脱却
沖縄県は、生活者のニーズの把握はほとんど問屋の情報や要望に頼っている状況だとし、問屋との関係強化に加え、直接生活者の意向を把握する取り組みと、それを踏まえたデザイン開発が必要だとしている。
後継者育成の再開
第10次振興計画の素案によると、生産額は減少傾向、従事者数はほぼ横ばいで推移している。2024年度から後継者育成事業を再開し、若手職人の確保と組合体制の強化に取り組んでいる。
消費地から遠い離島では、作り手が買い手の声を直接聞く機会が限られる。観光で島を訪れる人との接点は、その距離を縮める貴重な機会になりうる。
05関連する工芸
同じく離島の織物である久米島紬や宮古上布と比べると、島の産地に共通する課題が見えてくる。
06よくある質問
与那国織にはどんな種類がありますか
花織、ドゥタティ、カガンヌブー、シダディの4種に分類されます。
与那国織の歴史はいつからですか
1477年に島に漂着した朝鮮人の記録に機織りの記述があることから、少なくとも15世紀までさかのぼると考えられています。
与那国織の担い手はどれくらいいますか
沖縄県によると、従事者数は近年20人程度です。2024年度から後継者育成事業が再開されています。
出典
- 沖縄県 商工労働部ものづくり振興課. 「令和4年度 工芸産業振興施策の概要」. https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/630/r4_zentaiban.pdf
- 沖縄県. 「第10次沖縄県伝統工芸産業振興計画(素案)」. https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/040/770/soann.pdf
- 沖縄県. 「第8次沖縄県伝統工芸産業振興計画」(2017年3月). https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/629/daihatijishinkei.pdf