京友禅の生産量はなぜピークの4.5%になったのか、分業の産地が抱えるデジタル捺染の課題

1971年、京友禅の生産量は16,524,684反に達していた。それが2006年度には743,269反。ピークを100とすると、わずか4.5にまで落ち込んでいる。華やかな着物の代名詞である京友禅は、いくつもの専門職人が工程をリレーする分業の産地であり、その仕組みそのものが今、技術の継承とデジタル化の両面で試されている。
3行でわかる
- 京友禅(京小紋を含む)の生産量は1971年の約1652万反をピークに急減し、2006年度は約74万反と、ピーク時の4.5%になった。
- 京友禅には、職人が筆で描く「手描友禅」と、型紙を使う「型友禅」がある。型友禅は明治時代に広瀬治助が発明した。
- 分業で成り立つ産地では、絹のデジタル捺染でも複数の小さな事業所を経由するため、処理条件が共有されず染色不良が起きることがある。
01この工芸は何か(技術の正体)
京友禅は、糊で色の混ざりを防ぎながら、着物に絵画のような多彩な模様を染める技法である。筆で描く手描友禅と、型紙を使う型友禅に大きく分かれる。
京友禅は、図案、下絵、糸目糊置(いとめのりおき)、彩色など、多くの工程からなる[3]。糸目糊置とは、模様の輪郭に細い糊の線を引き、隣り合う色がにじんで混ざらないようにする工程である。
手描友禅は職人が一点ずつ筆で模様を描く方法、型友禅は型を使って量産する方法である[2]。
02産地とその歴史
手描友禅は元禄年間に扇絵師の宮崎友禅斎が確立したと伝えられ、明治時代には広瀬治助が型友禅を発明した。
元禄年間、京都・祇園あたりに住む扇絵師、宮崎友禅斎が、美しく華麗な絵を描く手法を加え、手描友禅として確立したと伝えられている。「友禅」の名はこの友禅斎に由来する[2]。
明治時代になると、鮮やかで色数の多い化学染料が輸入され、手描友禅の名匠だった広瀬治助が「写し友禅」として型友禅を発明した[2]。これにより、京友禅は量産の道を開いた。
03技術を、生活の言葉で
京友禅の生産量は1971年をピークに急減した。2006年度の内訳では、型染が約半分、機械捺染が約3割、手描染は約2割を占める。
京都市の繊維産業に関する資料(京友禅京小紋生産量調査)[1]
2006年度(2005年12月〜2006年11月)の京友禅(京小紋を含む)の総生産量は743,269反で、前年比10.5%減だった。1971年の16,524,684反をピークにその後は急激に減少し、1971年を100とすると4.5にまで落ち込んでいる。技術別では、型染が361,447反(48.6%)、機械捺染が240,880反(32.4%)、手描染が140,942反(19.0%)だった。
補足: 京友禅のすべてが手描きというわけではない。2006年度の生産量のうち、手描染が占めるのは約2割である。
04後継者問題とテクノロジーとの交差点
分業の産地では、伝統技術の担い手の確保に加え、新しいデジタル捺染でも工程をまたぐ品質管理が課題になっている。
伝統工芸士の継承
京友禅協同組合連合会の伝統工芸士会には約230人の伝統工芸士が所属し、図案、下絵、糸目糊置、彩色などの技術を受け継いでいる。2017年の記念展では、後継者の減少や消費者の好みの変化が課題として挙げられていた。
絹のデジタル捺染の課題
京都市産業技術研究所の2022年度の研究報告によると、市内の絹織物のデジタル捺染は分業によって複数の小規模事業所を経由するため、各事業所の処理条件が分からないまま工程が進むことがあり、染色不良などのトラブルにつながっている。研究所は前処理の条件が発色に与える影響を調べている。
分業は高度な技術を磨く仕組みとして京友禅を支えてきた。一方で、デジタル技術を取り入れる場面では、工程ごとの情報をどうつなぐかという、分業ならではの新しい課題が生まれている。
05関連する工芸
同じ京都の染織産業として、西陣織のデジタル化と比べると、織りと染めそれぞれの課題の違いが見えてくる。
06よくある質問
京友禅の生産量はどれくらい減ったのですか
京都市の資料によると、1971年の16,524,684反をピークに減少し、2006年度は743,269反と、ピーク時の4.5%になりました。
手描友禅と型友禅の違いは何ですか
手描友禅は職人が筆で一点ずつ模様を描く方法、型友禅は型を使って量産する方法です。型友禅は明治時代に広瀬治助が発明しました。
友禅の名前の由来は何ですか
元禄年間に京都・祇園あたりに住んでいた扇絵師、宮崎友禅斎の名に由来すると伝えられています。
出典
- 京都市. 「繊維産業」(京都市の産業に関する資料、京友禅京小紋生産量調査報告書の引用を含む). https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/cmsfiles/contents/0000060/60247/06.pdf
- 京都府. 「京友禅・京小紋(京都府の伝統的工芸品等)」. https://www.pref.kyoto.jp/senshoku/yuzen.html
- デジタルPR. 「京友禅協同組合連合会 伝統工芸士会三十五周年記念展」(2017年9月19日). https://digitalpr.jp/r/23547
- 京都市産業技術研究所. 令和4年度 研究報告「絹のデジタル捺染における色再現向上の検討」. https://tc-kyoto.or.jp/app/uploads/2024/01/outcome2022_05.pdf