堺打刃物はなぜプロの和包丁の約9割を占めるのか、140軒から50人規模に減った刃付け職人

プロの料理人が使う和包丁の、国内シェアは約9割。その産地が大阪府堺市である。始まりは16世紀、ポルトガルから伝わったタバコの葉を刻む「タバコ包丁」だった。ところが、包丁に刃をつける職人の工房は、かつての140〜150軒から、今では人数にして50〜60人ほどになったという証言がある。
3行でわかる
- 堺の和包丁は、プロの料理人用の包丁として国内シェア約9割を占めるとされる。
- 16世紀に伝わったタバコを刻む包丁をきっかけに生まれ、江戸幕府から「堺極」の印を認められた。
- 鍛造・刃付け・柄付けの分業で作られるが、職人の減少が続き、企業内での育成や海外への販路開拓が進められている。
01この工芸は何か(技術の正体)
堺打刃物は、鉄を打ち鍛えて形を作る「鍛造」、刃を研いで仕上げる「刃付け」、柄をつける「柄付け」という3つの工程を、それぞれ専門の職人が担って作る刃物である。
堺打刃物は、鍛造、刃付け(研ぎ)、柄付けの3つの工程を専門の職人が分業する[1]。
鍛造の技術を身につけるには10〜15年以上かかり、刃付けには10以上の工程があるとされる[1]。1982年に国の伝統的工芸品に指定され、「堺打刃物」「堺刃物」は地域団体商標にも登録されている[1]。
02産地とその歴史
16世紀にポルトガルから伝わったタバコの葉を刻む「タバコ包丁」が始まりで、江戸幕府から品質を保証する「堺極」の印を認められた。
堺打刃物は、16世紀にポルトガルから伝わったタバコの葉を切る「タバコ包丁」をきっかけに生まれた[1]。江戸幕府は「堺極(さかいきわめ)」の印をつけた販売を認め、堺の刃物の品質を保証した[1]。
その後、片刃の調理用包丁へと広がった。堺での刃物づくりは約600年の歴史を持つとされ、この地域の金属加工は古墳時代の5世紀にまでさかのぼるとされる[2]。
03技術を、生活の言葉で
堺の和包丁は、プロの料理人用の包丁として国内シェア約9割を占める。その品質を支えてきたのが、工程ごとに専門の職人が技を磨く分業である。
Forbes JAPANの取材(2023年10月)[2]
堺の和包丁は、プロの料理人用の包丁としては約9割の国内シェアを占めている。取材先の山脇刃物製作所は96年にわたって刃物の製造・販売を行い、13年前からは自社内で職人の育成も行っている。
補足: シェア約9割は、家庭用を含む包丁全体ではなく、プロの料理人用の和包丁についての数字である。
04後継者問題とテクノロジーとの交差点
分業を支える職人は大きく減っている。産地では、企業や市による後継者育成と、海外市場への販路開拓が進められている。
職人の減少と育成
70seedsの取材(2017年)で、刃付けの職人は、かつて140〜150軒ほどあった工房が、今では会社で30社に満たず、人数で50〜60人ほどだと証言している。取材先の工房では、会社員出身の30歳、堺市の伝統産業後継者育成事業から来た25歳、高校を卒業したばかりの1人の計3人が修業していた。
海外への販路
同じ取材では、アメリカで小売価格100万円ほどで売れた包丁があったことも語られている。堺市では2011年11月に「堺食産品海外セールス実行委員会」が設立され、刃物メーカーも参加して海外販路の開拓に取り組んでいる。
分業は高い品質を生む一方、どこか一つの工程の担い手が途絶えると、産地全体の生産が止まる。職人の人数をどう保つかは、堺打刃物の将来を左右する問題である。
05関連する工芸
同じ金工の産地として、海外市場で評価を高めた南部鉄器や、職人の減少に直面する江戸指物と比べると、課題の共通点が見えてくる。
06よくある質問
堺の包丁のシェアはどれくらいですか
プロの料理人用の和包丁として、国内シェア約9割を占めるとされています。家庭用を含む包丁全体の数字ではありません。
堺打刃物の始まりは何ですか
16世紀にポルトガルから伝わったタバコの葉を切る「タバコ包丁」がきっかけとされています。江戸幕府は「堺極」の印をつけた販売を認めました。
堺打刃物はどのように作られますか
鉄を打ち鍛える鍛造、刃を研ぐ刃付け、柄をつける柄付けの3つの工程を、それぞれ専門の職人が分業して作ります。
出典
- 堺市. 「堺打刃物」. https://www.city.sakai.lg.jp/kanko/sakai/keisho/dentosangyo/sakaiuchihamono.html
- Forbes JAPAN. 「機械でできるならやってみろ。『和包丁で日本一に』山脇刃物製作所」(2023年10月28日). https://forbesjapan.com/articles/detail/65984
- 70seeds(政治山掲載). 「【取材その後】包丁の街、堺の技術をのこす」(2017年5月26日). https://seijiyama.jp/article/news/omn20070530.html
- 堺市. 「堺食産品海外セールス実行委員会」. https://www.city.sakai.lg.jp/sangyo/shienyuushi/kaigai/juyokakudai/salesexco.html